なぜ「金物工法+パネル工法」なのか?(3)- パネル工法編 -
前回(2)からの続き。(初めての方は「(1)- はじめに -」からどうぞ)
パネル工法と一口に言っても様々ですが、ここで話すのは柱や梁で構造材を組み上げる在来工法に組み込むタイプのパネル工法で、尚且つ当社で採用している「HPシステム」の構造を基本に話を進めます。

このパネルが果たす役割としては
・外力の負担(壁であれば在来工法の筋交いなど耐力壁の役目)
・断熱材
・防湿気密層(在来工法で気密住宅を作る時に使う防湿フィルム等の役割)
・下地材(壁であれば在来工法の間柱や胴縁といった材料の役割)
などがあり、パネル工法では使う場所によって壁パネル、床パネル、天井パネル、屋根パネル、間仕切りパネルなどなど様々なパネルを組み合わせて作っていきます。
パネル工法を使う効果としては、生産の合理化と、先に上げた本来現場施工となる工事を工場生産化することで品質の均一化を目指したものなのです。
何となく全体像が見えてきたパネル工法ですが、パネル工法のよさはどこにあるのかもう少し具体的に整理してみましょう。
予め工場で必要な部材をパネルとして生産します。

そうすることで、
【品質均一化】
現場施工の場合、職人の腕や性格で仕上りにバラつきが生じたり、それを管理する現場監督の厳格さによっても仕上りが変わります。
こうした部分をパネル化によって単純作業化し、極論すると誰がやっても同じ品質というレベルにすることができます。
更には現場で大工の手道具で材料を切ったり貼ったりするのに比べ、工場で生産する方が部材の寸法精度ははるかに高くなります。
【高性能化】
(1)構造性能
在来工法は元来、柱梁や筋交いなどの線材で構造を構成していたのに比べ、パネル工法では建物の外周を全て面として構成できるため、耐震性が高まります。
少し専門的になりますが、工学的にも接点に応力が集中する在来工法よりも、面で力を受け、力の伝達経路が多いパネル工法の方が欠点を分散できるため安全性が高まります。
また、HPシステムに使われるHPパネルは金物と干渉することもなくスマートに納まるのも特徴。断熱材と干渉して断熱欠損を起こす心配もありません。

写真左は在来工法のホールダウン金物とのディテール。パネルの空間に綺麗に納まっているのが分かります。
写真右は金物工法との組み合わせですが、金物工法に至ってはホールダウン金物などの補強金物が不要ですので、当然金物との干渉の心配もなく最もスマート。
(2)耐久性能
これは全てのパネル工法に言えることではありませんが、ことHPシステムの場合は構造安全性を担保する壁パネルの耐久性を長く維持する仕組みがあります。
一般的なパネル工法の壁パネルは、壁の層構成の中で最も外気側に耐力壁の役割をするパネル面材(構造用合板・構造用MDF・ダイライト等々)があります。 2×4工法も同じと言えます。
HPシステムでは日本伝統の真壁造耐力壁の延長として作ることで、面材を室内側に配置。自然環境の最も安定した場所で面材を長期に渡って雨水被害や過酷な温湿度変化、留め付けている釘の錆びなどから保護して長寿命化に貢献しています。

写真の中の壁で茶色に見えているものがパネル面材(構造用MDF)。この上に石膏ボードを貼ってクロスなどの仕上げをして完成させます。
(3)断熱性能
断熱性能に関しても現場施工におけるリスクを克服することができます。
パネルには工場でミリ単位で精寸カットされた発泡プラスチック系断熱材(硬質ウレタンやフェノールフォーム、ポリスチレンフォームなど)が隙間なく組み込まれています。現場ではパネルを取り付けるだけで均一で隙間ない断熱工事、更には防湿シートなどの気密工事の一部も完了することができます。
【工期短縮】
工事途中に裸の構造のまま雨、雪にさらされる期間が短く、もしくは無くなります。
建物の規模や現場に入る職人の人数にもよりますが、通常2~3週間程度掛けてやる現場仕事を、パネル化することで早ければ1日で完了することができます。
その一方でデメリットを上げるなら、パネル化によって現場で省力化できる人件費や材料費、材料処分費などはあるもの、普通に在来工法で建築した場合と比べて工事金額が若干のコストアップになること。
もっとも、同じスペックで比較してコストアップになっているわけではありませんので、コストアップ以上の性能アップは望めます。
細々書きましたが、パネル工法の特徴をまとめると
「生産と施工の合理化。品質の向上、均一化」
ということに尽きると思います。
当社としては金物工法同様、建築後に改修や性能アップに多大なコストが掛かる部分には積極的に新しいテクノロジーを導入し、裏付けと合理性をもって高性能化を図っていきます。
そして、大工達は最も自分たちの技術が活かせる造作などの代替の効かない手仕事に注力していきたいと考えています。
次回はいよいよシリーズ完結編です。(「まとめ編」に続く・・・)
<関連過去エントリ>
・壁下地(パネル)完了 - 坂井の家 -
・建方:壁パネル施工 - 旭町の家 -
・高気密高断熱、耐震の次世代パネル工法|HPパネル(HPシステム) - こがねの家 -
・建方|壁・屋根のパネル化で高性能高品質住宅(動画付き) - 弁天橋通の家 -
・なぜ「金物工法+パネル工法」なのか?(1)- はじめに -
・なぜ「金物工法+パネル工法」なのか?(2)- 金物工法編 -
■問合せ先■
~新潟木の家 自然素材とテクノロジーを匠が活かす~
株式会社山口工務店
TEL : 0250-62-0318
FAX : 0250-62-7977
E-mail : yamahome@chive.ocn.ne.jp
blog左下のメールフォームからもどうぞ
<直近web更新>
(1)2011.01.19 Twitter会社公式アカウントを公開(試験運用)
(2)2011.01.13 施工事例>百津の家写真ページ下に”建築の記憶”を追加

ホームページをリニューアルしました。当社の住宅に対するスタンス、設計コンセプトなどかみ砕いた説明をしています。
パネル工法と一口に言っても様々ですが、ここで話すのは柱や梁で構造材を組み上げる在来工法に組み込むタイプのパネル工法で、尚且つ当社で採用している「HPシステム」の構造を基本に話を進めます。
パネル工法 | HPシステム

このパネルが果たす役割としては
・外力の負担(壁であれば在来工法の筋交いなど耐力壁の役目)
・断熱材
・防湿気密層(在来工法で気密住宅を作る時に使う防湿フィルム等の役割)
・下地材(壁であれば在来工法の間柱や胴縁といった材料の役割)
などがあり、パネル工法では使う場所によって壁パネル、床パネル、天井パネル、屋根パネル、間仕切りパネルなどなど様々なパネルを組み合わせて作っていきます。
パネル工法を使う効果としては、生産の合理化と、先に上げた本来現場施工となる工事を工場生産化することで品質の均一化を目指したものなのです。
何となく全体像が見えてきたパネル工法ですが、パネル工法のよさはどこにあるのかもう少し具体的に整理してみましょう。
生産の合理化
予め工場で必要な部材をパネルとして生産します。

そうすることで、
【品質均一化】
現場施工の場合、職人の腕や性格で仕上りにバラつきが生じたり、それを管理する現場監督の厳格さによっても仕上りが変わります。
こうした部分をパネル化によって単純作業化し、極論すると誰がやっても同じ品質というレベルにすることができます。
更には現場で大工の手道具で材料を切ったり貼ったりするのに比べ、工場で生産する方が部材の寸法精度ははるかに高くなります。
品質の向上
【高性能化】
(1)構造性能
在来工法は元来、柱梁や筋交いなどの線材で構造を構成していたのに比べ、パネル工法では建物の外周を全て面として構成できるため、耐震性が高まります。
少し専門的になりますが、工学的にも接点に応力が集中する在来工法よりも、面で力を受け、力の伝達経路が多いパネル工法の方が欠点を分散できるため安全性が高まります。
また、HPシステムに使われるHPパネルは金物と干渉することもなくスマートに納まるのも特徴。断熱材と干渉して断熱欠損を起こす心配もありません。

写真左は在来工法のホールダウン金物とのディテール。パネルの空間に綺麗に納まっているのが分かります。
写真右は金物工法との組み合わせですが、金物工法に至ってはホールダウン金物などの補強金物が不要ですので、当然金物との干渉の心配もなく最もスマート。
(2)耐久性能
これは全てのパネル工法に言えることではありませんが、ことHPシステムの場合は構造安全性を担保する壁パネルの耐久性を長く維持する仕組みがあります。
一般的なパネル工法の壁パネルは、壁の層構成の中で最も外気側に耐力壁の役割をするパネル面材(構造用合板・構造用MDF・ダイライト等々)があります。 2×4工法も同じと言えます。
HPシステムでは日本伝統の真壁造耐力壁の延長として作ることで、面材を室内側に配置。自然環境の最も安定した場所で面材を長期に渡って雨水被害や過酷な温湿度変化、留め付けている釘の錆びなどから保護して長寿命化に貢献しています。

写真の中の壁で茶色に見えているものがパネル面材(構造用MDF)。この上に石膏ボードを貼ってクロスなどの仕上げをして完成させます。
(3)断熱性能
断熱性能に関しても現場施工におけるリスクを克服することができます。
パネルには工場でミリ単位で精寸カットされた発泡プラスチック系断熱材(硬質ウレタンやフェノールフォーム、ポリスチレンフォームなど)が隙間なく組み込まれています。現場ではパネルを取り付けるだけで均一で隙間ない断熱工事、更には防湿シートなどの気密工事の一部も完了することができます。
施工の合理化
【工期短縮】
工事途中に裸の構造のまま雨、雪にさらされる期間が短く、もしくは無くなります。
建物の規模や現場に入る職人の人数にもよりますが、通常2~3週間程度掛けてやる現場仕事を、パネル化することで早ければ1日で完了することができます。
その一方でデメリットを上げるなら、パネル化によって現場で省力化できる人件費や材料費、材料処分費などはあるもの、普通に在来工法で建築した場合と比べて工事金額が若干のコストアップになること。
もっとも、同じスペックで比較してコストアップになっているわけではありませんので、コストアップ以上の性能アップは望めます。
細々書きましたが、パネル工法の特徴をまとめると
「生産と施工の合理化。品質の向上、均一化」
ということに尽きると思います。
当社としては金物工法同様、建築後に改修や性能アップに多大なコストが掛かる部分には積極的に新しいテクノロジーを導入し、裏付けと合理性をもって高性能化を図っていきます。
そして、大工達は最も自分たちの技術が活かせる造作などの代替の効かない手仕事に注力していきたいと考えています。
次回はいよいよシリーズ完結編です。(「まとめ編」に続く・・・)
<関連過去エントリ>
・壁下地(パネル)完了 - 坂井の家 -
・建方:壁パネル施工 - 旭町の家 -
・高気密高断熱、耐震の次世代パネル工法|HPパネル(HPシステム) - こがねの家 -
・建方|壁・屋根のパネル化で高性能高品質住宅(動画付き) - 弁天橋通の家 -
・なぜ「金物工法+パネル工法」なのか?(1)- はじめに -
・なぜ「金物工法+パネル工法」なのか?(2)- 金物工法編 -
■問合せ先■
~新潟木の家 自然素材とテクノロジーを匠が活かす~
株式会社山口工務店
TEL : 0250-62-0318
FAX : 0250-62-7977
E-mail : yamahome@chive.ocn.ne.jp
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<直近web更新>
(1)2011.01.19 Twitter会社公式アカウントを公開(試験運用)
(2)2011.01.13 施工事例>百津の家写真ページ下に”建築の記憶”を追加

ホームページをリニューアルしました。当社の住宅に対するスタンス、設計コンセプトなどかみ砕いた説明をしています。
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