基礎立ち上がり縦筋(あばら筋)にフックは必要か?に回答
木造住宅の基礎の構造に関してよく議論されるひとつに、基礎の縦筋(別名「縦補強筋」、「あばら筋」)の端部に“フック”が必要か否かという話。
これが設計者や現場監督の方々でも意見がまちまち。というわけで改めてここで論点と法解釈を整理してみます。
(実は配筋検査の記事を書き始めたら話が広がり過ぎたので別記事にしました(笑))
まず、縦筋の”フック付き”とはこんな感じ。

縦の鉄筋の端部が鍵状にフック型をしているのがフック付きの状態。
そして、こちらが”フックなし”の縦筋。

横の主筋と縦筋が十字に交差しただけの状態です。上の写真は実際には横の主筋と縦筋はスポット溶接で溶接され緊結されています。
このフックが必要か、不要かについては色々誤った解釈がされているのを見聞きしますのでここで整理。結論をまとめると以下の通りに。
フックを省略できるか否かは設計ルートにより異なります。
構造計算によらない場合は、建築基準法 告示第1347号の仕様規定に準拠することになります。その告示を読み込むと、懸案の箇所についてはべた基礎と布基礎とでそれぞれこう書かれています。
<べた基礎とする場合>
「立上り部分の主筋として径12mm以上の異形鉄筋を、立上り部分の上端及び立上り部分の下部の底盤にそれぞれ1本以上配置し、かつ、補強筋と緊結したものとすること。」
補足:”補強筋”=縦筋、あばら筋
<布基礎とする場合>
「前項各号(第五号ハを除く。)の規定によること。(以下略)」
補足:”前項”とはべた基礎の上の条文が該当します。
ん~ざっくり(笑)“緊結”とは何をもって緊結?という話ですが、告示にはそれ以上でもそれ以下でも解説はないのでこれまた議論・誤解釈を呼びます。
通常、緊結というのは存在応力を十分に伝えることと解釈できますので、番線などの結束線で留めただけでは緊結とはいえないと判断できます。
というわけで、告示の「・・・補強筋と緊結したものとすること。」を満足するには、以下2つのいずれかの方法を取るのが安全側の解釈になります。
(1)縦筋の端部にフックを付ける
(2)品質が明らかなスポット溶接を用いる※1
※1:溶接金網に関する構造耐力性能評定((財)日本建築センター)等
(2)は要するにフックなしでも溶接すれば緊結とみなすということですが、適当な溶接は不可。工場生産品のいわゆる“組み立て鉄筋“の中で、工場が性能保証型スポット溶接として性能評定を受けるなど、溶接の品質が担保されたものでなければ緊結とはいえません。
以上のように、仕様規定のルートに従う場合(=構造計算をしない殆どの木造住宅)は、上記の(1)か(2)のどちらかの方法で主筋と補強筋とを“緊結”しなければならないという解釈になります。
構造計算をしている場合はシンプル。構造計算であばら筋の端部をフックなしとみて、あばら筋効果に期待せず設計して安全が確認できればフックなしとすることができます。
フック有りとして計算している場合は、先ほどの仕様規定のルートに書いた(1)か(2)の施工方法を取ります。
現実には木造2階建ての標準的な建物であれば、計算するとこのあばら筋による拘束効果は殆ど無視できるほどの影響力であることがわかります。木造の場合は基礎がせん断で決まることは殆どなく、曲げが支配的。
というわけで、木造の基礎ではフックの有り無しは構造的にそれ程重要ではありません。ただし、根拠なくフック有り無しを判断してよいわけではありません。
今回は基礎の立ち上がり縦筋の法解釈でしたが、こうした細かな部分で曖昧な解釈ができてしまうという話は建築基準法に限らず、法律関係の解釈ではよくある話。
建築基準法は建築の最も基本的な法律なので、ザックリ曖昧表記なのはそうせざる終えないのもわかります。(具体的に書き過ぎるのも自由や新技術、性能設計を拘束することになるので)
ただその弊害がこのような混乱、誤解釈がなされる原因にもなっているというなんとも悩ましい問題です。
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(2)2013.03.12 「イベント」ページを新規作成
(3)2013.03.06 「採用情報」を更新

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フックを省略できるか否かは設計ルートにより異なります。
構造計算によらない場合(構造計算なし)のフック有無判断
構造計算によらない場合は、建築基準法 告示第1347号の仕様規定に準拠することになります。その告示を読み込むと、懸案の箇所についてはべた基礎と布基礎とでそれぞれこう書かれています。
<べた基礎とする場合>
「立上り部分の主筋として径12mm以上の異形鉄筋を、立上り部分の上端及び立上り部分の下部の底盤にそれぞれ1本以上配置し、かつ、補強筋と緊結したものとすること。」
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<布基礎とする場合>
「前項各号(第五号ハを除く。)の規定によること。(以下略)」
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ん~ざっくり(笑)“緊結”とは何をもって緊結?という話ですが、告示にはそれ以上でもそれ以下でも解説はないのでこれまた議論・誤解釈を呼びます。
通常、緊結というのは存在応力を十分に伝えることと解釈できますので、番線などの結束線で留めただけでは緊結とはいえないと判断できます。
というわけで、告示の「・・・補強筋と緊結したものとすること。」を満足するには、以下2つのいずれかの方法を取るのが安全側の解釈になります。
(1)縦筋の端部にフックを付ける
(2)品質が明らかなスポット溶接を用いる※1
※1:溶接金網に関する構造耐力性能評定((財)日本建築センター)等
(2)は要するにフックなしでも溶接すれば緊結とみなすということですが、適当な溶接は不可。工場生産品のいわゆる“組み立て鉄筋“の中で、工場が性能保証型スポット溶接として性能評定を受けるなど、溶接の品質が担保されたものでなければ緊結とはいえません。
以上のように、仕様規定のルートに従う場合(=構造計算をしない殆どの木造住宅)は、上記の(1)か(2)のどちらかの方法で主筋と補強筋とを“緊結”しなければならないという解釈になります。
構造計算による場合(構造計算あり)のフック有無判断
構造計算をしている場合はシンプル。構造計算であばら筋の端部をフックなしとみて、あばら筋効果に期待せず設計して安全が確認できればフックなしとすることができます。
フック有りとして計算している場合は、先ほどの仕様規定のルートに書いた(1)か(2)の施工方法を取ります。
現実には木造2階建ての標準的な建物であれば、計算するとこのあばら筋による拘束効果は殆ど無視できるほどの影響力であることがわかります。木造の場合は基礎がせん断で決まることは殆どなく、曲げが支配的。
というわけで、木造の基礎ではフックの有り無しは構造的にそれ程重要ではありません。ただし、根拠なくフック有り無しを判断してよいわけではありません。
今回は基礎の立ち上がり縦筋の法解釈でしたが、こうした細かな部分で曖昧な解釈ができてしまうという話は建築基準法に限らず、法律関係の解釈ではよくある話。
建築基準法は建築の最も基本的な法律なので、ザックリ曖昧表記なのはそうせざる終えないのもわかります。(具体的に書き過ぎるのも自由や新技術、性能設計を拘束することになるので)
ただその弊害がこのような混乱、誤解釈がなされる原因にもなっているというなんとも悩ましい問題です。
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(1)2013.03.14 コンセプト>「安心」ページ内の省エネ標準スペックを引き上げ、周辺解説も追記
(2)2013.03.12 「イベント」ページを新規作成
(3)2013.03.06 「採用情報」を更新

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