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新潟採用第1号「APW330 真空トリプルガラス」|優位性は何か?

YKKの樹脂サッシAPW330は、意匠性と断熱性、コストバランスの優秀さから標準採用しています。
そのAPW330には実は”北海道・東北限定仕様”というものが存在します。
それが今回紹介する真空トリプルガラスを装備し性能アップを図った「APW330 真空トリプルガラス」。

窓はまだまだ性能不足と思っていても、新潟は対応エリア外でしたので首を長くして待っていましたがついに実現。

R0032503APW330真空トリプルガラス

「弁天橋通の家」は新潟県第一号で「APW330 真空トリプルガラス」を採用しました。
ただし供給体制がまだソフトランディングなので、いつもの工場とは別で、遥々仙台工場から運ばれてきました。

「APW330 真空トリプルガラス」性能アップの仕組み


現在主流のサッシはペアガラス。ガラスが2枚の2層でその中間層には乾燥空気などが封入されています。従来から使っていたAPW330も層構成は同じ。

R0032394APW330真空トリプルガラス

「APW330 真空トリプルガラス」ではガラスを2層から3層にし、さらに断熱性をアップするために、3枚のガラスの間でできる2つの空気層のうちの1層を真空にしています。
ペアガラスの中空部は通常、乾燥空気やアルゴンガス(空気より熱伝導率が低い)が封入され、封入気体の断熱効果で断熱性を高めています。とはいえ、気体である限り浮力による対流が生じ熱を伝えます。真空であればそもそも対流する気体が存在しませんので対流熱伝達はゼロ。真空層はわずか0.2mmですが真空層の厚さと真空による断熱効果に掛け算効果はありませんので必要十分。

そんな真空層を設けることで窓として性能を飛躍的にアップ。普通のトリプルガラスでは空気層も含めたガラス部分の総厚さ増えるためサッシの枠もゴツくなりますが、真空層の0.2mmのお陰で従来のAPW330とサッシ枠は共用でき意匠性も従来通りに損ねず性能アップ。

詳しくはメーカーサイト参照。
APW330 真空トリプルガラス - YKK AP株式会社


「APW330 真空トリプルガラス」の外観上の違い


洗練さと高性能がコンセプトのAPWシリーズ。
真空トリプルガラス仕様と従来のAPW330と比較してもサッシ枠のデザインは何も変わりません。見慣れない方ですとおそらく説明されないとその違いに気づきません。

(1)真空ガラスの証、エア抜き保護キャップ
トリプルガラスの内、性能の要となる真空ペアガラス。宇宙ではないので、地上で真空層を作るためには空気を抜く行程が必要。その空気を抜いた後の栓を守るのがこの”保護キャップ”。

R0032428APW330真空トリプルガラス_エア空気抜き保護キャップ

外から見て右上に直径1.5cmの円形キャップがあります。

R0032431APW330真空トリプルガラス_エア空気抜き保護キャップ

写真では分かりにくいですが、このエア抜き栓の保護キャップは屋外側のガラスより1枚内側のガラスに付いています。つまり3層ガラスのうちの中央のガラス面に付いています。保護キャップを直接触ることがないので、室内側、屋外側共にガラスを拭く際にも引っかかるなどの邪魔にはなりません。

(2)真空ガラスのドットスペーサー
真空層はわずか0.2mmですが、ガラスの間をそのまま真空にしてしまうと大気圧で潰れてしまいます。そのため、真空層を保持のためガラス全面にドット状の等間隔でドットスペーサー(マイクロスペーサー)が配置されています。

R0032421APW330真空トリプルガラス_マイクロスペーサー_ドットスペーサー

ただこれは近くで凝視しないとわからない程度の存在感。写真でも撮りづらい(笑)

R0032419APW330真空トリプルガラス_マイクロスペーサー_ドットスペーサー

これだけ寄ればようやく黒いドット状の粒が確認できます。

浴室や洗面脱衣室など、白い不透明ガラスを使った場所ではこのドットがよく分かりますが、それ以外の一般部では眺望状は何の障害にもならないくらいの存在感。

窓は窓を見せるものではなく、その先の外(外部景観)を見るためのものですので、こうした控えめなデザインは賞賛に値します。


APW330 真空トリプルガラスの優位性


意匠性の差異はここでは別として考え、他社の「樹脂サッシ+トリプルガラス+アルゴンガス封入」という同じ構造のものと比較して優位なところは

・断熱性能と日射取得率が共に優れている

という点。

R0032401APW330真空トリプルガラス_引違い戸

窓の断熱性を上げようとした場合、Low-Eで性能を稼ぐ手がありますが、それでは断熱性能は上がっても日射取得率が低下してしまうというトレードオフのジレンマに。夏は日射遮蔽効果で冷房負荷を抑えられるが、逆に冬場は日射取得が少なくなり暖房負荷が増えてしまう。
住宅一棟でのベストミックスは、建物の方位によって窓の日射取得率の異なるガラスを採用し、かつ建築として日射遮蔽に有効な庇、軒の出を設けることです。

設計で意図的な日射取得率の圧縮(=日射を入れない)はあっても、弊害としての日射取得率の低下は歓迎できません。

APW330 真空トリプルガラスは、
・熱貫流率(U値[K値])=1.09W/m2K(窓種により異なる)
・日射取得率=0.51
という国内最高クラスの断熱性と日射取得率のベストバランス。
APW330は従来の樹脂サッシと比べて枠の見付が細いので、窓の中でのガラスが占める割合(ガラス面積率)が1割程増えているのも理由の一つ。

ベースモデルのAPW330のLow-Eガラスの”ニュートラル”の日射取得率=0.62と比べると、真空トリプルガラスの日射取得率=0.51で、0.51/0.62=0.82となり、従来のAPW330の80%程度ほどに日射侵入率が下がります。
今までAPW330を使っていた我々が目で見てもガラス面の透過性はわずかに落ちているなと分かります。トリプルガラスですから同じ透過率はどうやっても無理な訳で、性能バランスを加味すれば許容できる範囲で健闘していると思います。


APW330 真空トリプルガラスとその他の窓の性能比較


最後に、目安となる他の窓と合わせてスペックを列記。

・APW330 真空トリプルガラス
 熱貫流率(U値[K値])=1.09W/m2K(窓種により異なる)
 日射取得率=0.51

・APW330(標準品)
 熱貫流率(U値[K値])=2.33W/m2K(窓種により異なる)
 日射取得率=0.62(Low-E 断熱ニュートラル)

・木製サッシ トリプルガラス+アルゴンガス入り
 熱貫流率(U値[K値])=1.0W/m2K前後(メーカー・仕様により異なる)
 日射取得率=0.3~0.6程度(メーカー・仕様により異なる)

設計者としては、枠も木製で断熱性能も申し分ない木製サッシのトリプルを選びたいところですが、コストも驚くべきことに(苦笑)
コストも踏まえ、現実的な物件採用ベースで考えると従来のAPW330、そして真空トリプルガラスのAPW330の2本立てが選択肢になりそうです。


関連過去記事


2011.03.04 シャープな意匠と高断熱を両立|YKK新樹脂サッシ「APW330」
2012.12.13 窓の高断熱化がなぜ必要か
2012.05.18 サッシ搬入~取付け、ユニットバス断熱、小屋裏物置
2011.12.01 意匠+性能+コストの3拍子|樹脂サッシAPW330




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